三輪の神の伝説

  神の山 三輪山   雷神のはなし
  丹塗矢伝説   縁結びの磐座
  おだまき伝説   大神神社と摂末社
  箸墓伝説

神の山三輪山

倭は国のまほろば
たたなづく 青垣
山隠れる 倭し美し

 

 ヤマトタケルが東征のおり、故郷の大和を偲んで歌った望郷の歌で、「たたなづく青垣」とは山々が重なって緑の垣のようになっている様です。その青垣の中でとりわけ美しい円錐形の山が三輪山です。三輪山は大和の神奈備、三諸山の名でも知られ、古来、神山としてみだりに立ち入ったりしない禁足の山でもあり、今日にいたるまで太古の森厳な緑を保っています。
『古事記』には、大国主神と少彦名神とが国づくりの後、少彦名神が常世の国に渡ってしまわれ、大国主神が協力者のないことを愁えておられる時、海を光して依り来る神があった。その神は「私をよく祀ったなら、協力しよう」と述べられ、「どのようにお祀りすればよいか」との大国主神の問いに「倭の青垣、東の山の上に斎きまつれ」と答えられたと記されて、「これは三諸の山の上の坐す神なり」と説明されています。
『日本書紀』では、海を照らして大己貴神(大国主神)の前に現れた時、「吾は汝が幸魂・奇魂なり」とおっしゃったと記され、「これ、大三輪の神」なりと説明されています。

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丹塗矢伝説

『古事記』に記されている伝説で、大物主大神が美しいセヤダタラヒメを見初めて、姫が厠に入った時に丹塗矢になって溝から流れ下り、姫のほとを突きました。驚いた姫がその矢をもってきて床のそばに置いたところ、矢はたちまちに麗しい男性となり、姫はその男性と結婚しました。そして生まれた子の名はヒメタタライスケヨリヒメと言います。この姫が成長して三輪山の麓で七媛女の一人として遊んでいるのを初代神武天皇に見初められ、結婚することになります。

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おだまき伝説

これも『古事記』に残されている伝説で、美しいイクタマヨリヒメのもとに夜毎立派な男性が通ってきて、やがて姫は妊娠します。姫の両親は不思議に思って姫に問いますが、姫は「姓も名前も知らない」と言うので、両親は姫にその男性の衣の裾に糸のついた針を刺しておくように教えます。やがて、夜になると男性は現れ、翌朝、帰っていきます。見ると、衣の裾につけた糸は戸の鍵穴を通って外に出ており、残った麻は三勾だけでした。糸をたどると三輪山の社のところで留まっており、そこで毎夜通って来られたのは三輪の神であり、生まれる子どもは三輪の神の御子であるとわかったと記されています。この神の子孫がオオタタネコです。
オオタタネコは第十代崇神天皇の御世、疫病が流行した時に、天皇の夢に大物主大神が現れて「吾が子孫のオオタタネコをもって私を祀れば、国が安らかに治まる」と示されました。天皇はさっそくオオタタネコを探し出し、神主として三諸山に大三輪大神を祀り、疫病を鎮めました。また、イクタマヨリヒメの元に麻が三勾(三輪)残っていたので、この地を三輪というようになりました。

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箸墓伝説

大物主大神と結婚したヤマトトトビモモソヒメが、夜だけ通ってくる夫に「あなたのお姿を見たい」と言うと、「もっともなことだ。明朝、あなたの櫛筥に入っていよう。どうか私の姿に驚かないように」とお答えになりました。翌朝、姫が櫛筥を開けてみると、そこには衣紐ほどの麗しい小さな蛇が現れました。姫は驚いて叫んでしまいます。すると、大神は恥じてたちまち人の形となり、自分に恥をかかせたと言って大空を踏んで三諸山に帰ってしまわれます。残された姫は仰ぎみて悔い、どすんと座り込みました。その時、箸で陰部を突いて亡くなってしまわれます。この姫の墓を箸墓と言い、その墓は昼は人が造り夜は神が造ったと伝えられています。

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雷神のはなし

『日本書紀』に記されている伝説で、第十四代雄略天皇がチイサコベノスガルに「三諸岳の神の形が見たい」と命じました。スガルは三諸岳に登って大蛇をとらえ、天皇に奉り、天皇は斎戒をせずにそれをご覧になりました。すると大蛇が雷のような音をたて、眼はギラギラと輝いたので、天皇は見ることができず眼を覆って殿中に隠れてしまわれ、大蛇をお山にお返ししました。これによって三諸岳は「雷の岳」と名を改めたといいます。

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縁結びの磐座

 古来からの神話、伝説にあるように、大物主大神のご神徳は国を造り、安泰とする力をなし、疫病を鎮め、雷神水神として現れて五穀を豊穣に実らされます。また、酒の神でもあり、すべてを育む産霊神であります。
「産霊」とは「結び」に通じ、ごはんを握った「おにぎり」も「おむすび」と言うことにより、その稲の霊力が産ばれ、食べた人の体のなかで聖なるエネルギーとして産ばれます。これらの伝説にも語られているように、「産び」、「むすび」、「結び」は良い縁を産び(結び)、悪い縁を切り、新たな美しい関わりを創造します。
良い人との出会い、良い仕事との出会い、良い家や土地との出会い、アイデアのひらめきなど、縁は生きるすべてのことに関わるといえるほど、多岐多様にわたります。縁は時を超え、空間を超え、機会を創ります。ここに人知を超える「たまゆら」の導きがあると言えます。平成九年の冬至の朝、村岡逸朗さんが「三輪明神御分霊磐座大神神社」のご神前で「今年は結婚をします。皆様のご協力を!」と言挙げし、翌平成十年の夏には良縁に恵まれ、つい先日結婚をされたことは皆様の記憶に新しいと思います。
清らかに、軽やかに発せられた言霊は、美しい縁(円)を生みます。言霊、えん、縁、円は縁が満つる方へ向かい、円満(和)となります。円が示す○は輪を形づくり、ここに人と人のむすびは大きな輪(和)へと収束し、美しい和、美和、三輪となります。

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大神神社と摂末社

三輪山は周囲約16キロメートルという広大なお山であり、神籬としての杉や磐座(奥津磐座、中津磐座、辺津磐座)が祀られるお山の中をはじめ、山麓の多くに摂社・末社が祀られています。以下、その三磐座と主な摂末社およびそれぞれのご祭神を紹介しましょう。

 

大神神社 ご祭神・ 大物主大神(倭大物主櫛甕魂命)(奥津磐座)
大己貴神(中津磐座)
少彦名神(辺津磐座)
摂社 高宮神社 ご祭神・ 日向御子神
摂社 狭井坐大神荒魂神社 ご祭神・ 大神荒魂神
大物主大神
姫蹈鞴五十鈴姫命
勢夜多々良姫命
事代主神
摂社 檜原神社 ご祭神・ 天照大神若御魂神
伊奘諾命
伊奘冉命
末社 豊鍬入姫宮 ご祭神・ 豊鍬入姫命
摂社 大直禰神社(若宮) ご祭神・ 大直禰命
少彦名命
活玉依姫命
摂社 神宝社 ご祭神・ 家都御子神
熊野夫須美神
御子速玉神
末社 天皇社 ご祭神・ 御真木入日子印恵命(崇神天皇)
末社 久延彦社 ご祭神・ 久延毘古命
末社 祓戸社 ご祭神・ 祓戸四柱神
分祠 三輪明神広島分祠
分祠 伊勢山皇大神宮内三輪明神御分霊大神神社

 

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